オンデマンド配信とは?やり方やライブ配信との違い、プラットフォームの選び方、CDNの活用まで解説
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近年、企業における動画コンテンツの活用が急速に拡大しています。とくに社内研修や顧客向けセミナー、製品紹介といった分野では、従来の対面形式に加えて動画配信を導入する企業が増加しています。そのなかでもオンデマンド配信への注目が高まっています。
しかし、動画配信の導入を検討する際に「既存の動画配信プラットフォームで十分なのか?」「アクセス集中で配信が止まらないか?」といった懸念を抱く企業も少なくありません。また、社外秘情報を含んだ機密性の高い動画の配信では、公開範囲やコンテンツ保護の問題もあります。
本記事では、オンデマンド配信の特徴から導入方法について、企業のマーケティングや情報発信などに動画を活用したい方が押さえておくべきポイントを詳しく解説します。
目次
オンデマンド配信とは?ライブ配信との違い
動画配信を導入するまえに、まず理解しておきたいのがオンデマンド配信の基本的な特徴と、ライブ配信との違いです。
オンデマンド配信の特徴
オンデマンド配信とは、事前に録画・編集された動画を、視聴者が好きなタイミングで視聴できるように配信する方式です。
配信の仕組みとしては、動画ファイルをサーバーにアップロードし、視聴者がWebブラウザやアプリを通じて視聴します。事前に制作した動画を公開するため、配信者側がリアルタイムで操作する必要はありません。
ライブ配信との違い
ライブ配信は、リアルタイムで動画を配信する方式です。ウェビナーや商品発表会、社内会議の中継などに活用されています。配信者と視聴者が同じ時間を共有するため、チャット機能やQ&Aセッションを通じたリアルタイムでのコミュニケーションが可能です。
オンデマンド配信とライブ配信には、以下のような違いがあります。
| 項目 | オンデマンド配信 | ライブ配信 |
|---|---|---|
| 配信方式 | 事前に録画した動画をサーバーに保存して配信 | 決められた時間にリアルタイムで配信 |
| 視聴タイミング | 視聴者が好きな時間に視聴 | 配信時間に合わせてリアルタイムで視聴 |
| 動画制作 | 事前に制作・編集が可能 | リアルタイムで撮影・配信 |
| 視聴者との交流 | コメント機能はあるが、リアルタイムでの返答は不可 | チャットやQ&Aによるリアルタイム交流が可能 |
| コスト構造 | 初期制作費はかかるが、繰り返し利用でき、ストレージや帯域の維持コストは安定 | 配信ごとに人件費や機材費が発生し、配信規模に応じて帯域コストも変動 |
オンデマンド配信のメリットと活用シーン
それでは、オンデマンド配信の具体的なメリットと活用シーンを確認しましょう。
視聴者にとってのメリット
時間や場所を選ばずに動画を視聴できるため、興味のある部分を繰り返し確認したり、必要な箇所だけを選んで視聴したりすることが可能です。移動中や空き時間など、自分の都合に合わせて視聴できるため、忙しいスケジュールのなかでも動画コンテンツを利用できます。
配信者にとってのメリット
一度作成した動画を何度でも活用できるため、長期的にコストを抑えて継続的な情報発信が可能です。また、事前に内容をしっかりと確認してから公開できるため、音声や映像の品質を保ちつつ、正確な情報を伝えられます。
効果的な活用シーン
社内研修・教育
視聴者が自分のペースで繰り返し学習できるメリットを活かし、新人研修やコンプライアンス教育、技術研修、安全教育などで導入されています。一度動画を制作すれば継続的に利用できるため、定期的な教育プログラムに適しています。
顧客サポート
24時間いつでも必要な情報を視聴できるため、製品の使い方説明やトラブルシューティング、FAQなどで活用されています。これにより問い合わせ対応の効率化やサポート業務の負荷軽減が期待できます。
マーケティング・営業
見込み顧客が任意のタイミングで視聴できるため、ウェビナーアーカイブや製品紹介、導入事例の紹介などで活用されています。営業活動では、商談時に動画を活用することで、より効果的なプレゼンテーションがおこなえます。
オンデマンド配信の方法とプラットフォーム選択
オンデマンド配信の特徴を理解したところで、実際にオンデマンド配信する際の流れと、プラットフォームの選び方について見ていきましょう。
オンデマンド配信の基本的な流れ
オンデマンド配信を導入する際は、以下のような手順で進めるのが一般的です。各段階における検討事項を理解しておくことで、スムーズな導入と効果的な運用を実現しましょう。
1. コンテンツ企画
配信の目的(社内研修、顧客向け情報提供、マーケティングなど)を明確にし、ターゲット視聴者と想定視聴環境を設定します。この段階で、必要な動画の本数や更新頻度、視聴できるユーザーの範囲などの要件も決定します。
2. プラットフォーム検討
オンデマンド配信には、YouTubeやVimeoなどの既存の動画配信プラットフォームを利用する方法と、自社で配信システムを構築する方法があります。どちらを選ぶかは、コンテンツ保護要件、予算、視聴者制御の必要性などの観点から判断します。
3. 動画制作
動画を撮影し、不要な部分のカットや字幕・テロップの追加などの編集をおこない、選択したプラットフォームで再生可能な動画形式に変換します。
4. 公開・運用
動画をアップロードし、公開範囲の設定をします。公開後は視聴状況を確認し、必要に応じてコンテンツの改善をおこなってください。
既存の動画配信プラットフォームの特徴
オンデマンド配信を始める際にもっとも手軽な方法は、既存の動画配信プラットフォームを活用することです。これらのプラットフォームには配信に必要な機能がそろっているため、特別な技術知識がなくても動画配信を始められます。
初めて動画配信に取り組む企業や、まずは小規模で始めたい場合は、既存の動画配信プラットフォームの利用が適しています。代表的なプラットフォームとしては、YouTubeやVimeoなどがあり、それぞれ以下のような特徴があります。
YouTube
- 無料で利用可能、世界最大の動画配信プラットフォーム
- 検索エンジンに表示されるため、関連キーワードで検索したユーザーの流入が期待できる
- 広告が表示されるため視聴体験に影響する可能性がある
- 企業の機密情報や限定公開には向かない
Vimeo
- 高画質配信に対応、プロフェッショナル向け機能が充実
- 広告がなく、有料プランでカスタマイズ性が高い
- 日本での認知度はYouTubeより低い
- ビジネス向け機能が豊富だが、コストがかかる
既存の動画配信プラットフォームでは、各サービスごとに独自の利用規約が定められています。もし規約に違反した場合、動画削除やアカウント停止のリスクがあります。また、プラットフォームによっては広告が表示される場合もあり、視聴者が途中で離脱する可能性も考えられます。
自社配信システムの特徴
社外秘の情報を含む研修動画や、社員限定公開の動画など、細かな公開設定やコンテンツ保護が必要な場合は、自社配信システムが適しています。
自社配信システムでは、企業の要件に合わせて配信環境をカスタマイズできるため、既存の動画配信プラットフォームでは実現できない柔軟な運用が可能です。主な特徴は以下のとおりです。
自社配信システムの主な特徴
- コンテンツの公開範囲や視聴権限を自由に設定
- 企業イメージに合わせたデザインのカスタマイズ
- 詳細な視聴データの収集と分析
- 広告による中断がなく、スムーズな視聴が可能
自社配信システムの構築には初期投資と継続的な運用コストが必要となります。また、システムの構築・運用には一定の技術的知識が求められるため、社内のシステム部門や外部パートナーとの連携も検討したりすることが重要です。
自社配信システムを構築してオンデマンド配信する際の課題
オンデマンド配信を自社構築のシステムで行う場合には、自社配信特有の課題への対応が必要になります。とくに以下のような課題への対策を事前に検討しなければいけません。
アクセス集中時の安定性確保
人気コンテンツを公開した際、短時間に多くの視聴者がアクセスすると、サーバーの処理能力が追いつかず、配信が不安定になる場合があります。その結果、動画の読み込みが遅くなったり、再生中に頻繁に止まったりすることがあります。場合によっては、サーバーがダウンして配信自体が停止してしまう可能性もあります。こうした課題は、CDN(Content Delivery Network)を活用して負荷を分散することで解決できます。
配信に伴う費用管理
動画配信は大容量のデータ転送を伴うため、従量課金制のサーバーを利用している場合、視聴者数の増加に比例してコストが急激に上昇する可能性があります。CDNのキャッシュ機能を活用することで、配信元サーバーからの転送量を削減し、転送コストを抑制できます。
限定公開によるコンテンツ保護
企業の機密情報や重要な動画コンテンツを扱う場合には、適切なアクセス制御が求められます。IPアドレス制限や視聴可能時間の制御などを組み合わせて、意図しない視聴者への情報漏えいを防ぐ必要があります。こうした要件は、CDNのアクセス制御機能を活用することで対応可能です。
オンデマンド配信におけるCDN活用の選択肢
前章で説明したとおり、自社配信システムの各課題に対して、CDN(Content Delivery Network)を活用することは効果的な解決策です。本章では、CDNの仕組みと具体的な効果について詳しく解説します。
CDNとは
CDNは、複数拠点に分散配置されたサーバーネットワークを使い、オリジンサーバー(配信元のサーバー)のデータを一時的に保存(キャッシュ)して、ユーザーへのデータの配信を代行する仕組みです。これにより、オリジンサーバーへの負担を軽減できます。
1台のサーバーからすべての視聴者に配信するサーバー構成では、アクセスが集中した際に負荷が集中し、配信が不安定になる問題があります。この問題への対策としては、サーバーのスペック向上(スケールアップ)、サーバー台数の増加(スケールアウト)、オートスケール機能の導入、自前でのキャッシュサーバー運用などが挙げられます。
CDNの導入も有効な解決策のひとつです。既存構成の前段に追加するだけで導入でき、構成変更が最小限ですむため、短期間で高い効果を発揮でき、運用負荷も低く抑えられます。
CDNについてもっと詳しく知りたい方は、下記コラムをご確認ください。
オンデマンド配信におけるCDNの効果
アクセス集中時の安定性向上
大量の同時アクセスが発生しても、CDNネットワーク全体で負荷を分散するため、サーバーダウンのリスクを大幅に軽減できます。全社研修や人気動画の公開時など、多数の視聴者が同時に視聴する配信でも、安定した配信環境を維持することが可能です。
配信速度の改善とスムーズな動画再生
CDNに一時保存された動画を配信することで、動画配信元のサーバーへの負荷を避け、経路短縮や混雑回避により配信速度の改善が見込めます。結果として、視聴開始時の待機時間や再生中の途切れが減少し、動画がスムーズに再生されるようになります。同時視聴者数が多い場合でも回線負荷が軽減されるため、安定した配信が可能です。
帯域使用量の最適化によるコスト削減
CDNがデータを一時保存することで、動画配信元のサーバーやストレージからの転送量を削減し、帯域使用量を抑制できます。配信元が転送量課金型の場合は、従量課金による費用を削減でき、転送量課金型でない場合でも、サーバースペックや帯域契約を下げることで費用を抑える効果があります。また、同じ動画が繰り返し視聴される環境ではキャッシュヒット率が高まり、とくに視聴回数の多い研修動画などでは大きなコスト削減につながります。
CDNを使ったオンデマンド配信システム構成
サーバーの負荷分散や安定性の課題に対して、オンデマンド配信では下記のような構成で動画ファイルをストレージサービスに保存し、CDNを通じて視聴者に配信する方法が一般的です。
基本的な構成
- 1. ストレージ(データ保存):制作した動画を配信用のストレージに保管
- 2. CDN(コンテンツ配信):CDNサービスがストレージから動画を一時保存して配信
- 3. ユーザー(視聴):視聴者がブラウザやアプリを通じて動画にアクセス
「さくらのクラウド」や「ウェブアクセラレータ」を用いた動画配信システムの構成例については下記ページをご確認ください。
まとめ
オンデマンド配信は、視聴者が好きなタイミングで動画を視聴でき、一度制作した動画を繰り返し活用できる配信方式です。既存の動画配信プラットフォームを活用すれば、手軽に配信を始められます。一方、自社配信システムでは自社の要件に応じた柔軟な公開設定やコンテンツ保護機能を実装できます。
自社配信システムを選択する場合、アクセス集中時の安定性やコスト管理、コンテンツ保護といった課題への対策が重要になります。これらの課題解決には、CDNの活用が効果的です。
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